ICLやIPCLといった眼内コンタクトレンズ手術を検討する際、「どちらの手術が自分に合っているのだろうか?」と悩む方も多いでしょう。ICLとIPCLの違いは、レンズの設計、そして中でも注目は老眼への対応力です。
特に40代以上の方にとっては、老眼矯正ができるかどうかが重要な選択基準になるでしょう。この記事では、レンズの素材や安全性、費用まで徹底比較し、あなたに最適なレンズを選ぶためのコツを詳しく解説します。後悔しない視力矯正のために、両者の違いを正確に理解しましょう。

ここでわかること
・IPCLとICLの違い(レンズ設計・手術適応・安全性・費用)

【自己紹介】
眼科勤続年数・約15年の現役視能訓練士(国家資格保有の眼科検査員)です。
関東の端っこの小さい病院で細々とICL手術に関わっています。
2025年に新たに日本国内で承認された「IPCL」について、学会での報告があったり複数の病院で手術が行われています。
そんな中勉強した事・聞いた事をふまえて記事を書いています。
IPCLとICLの「決定的な違い」はレンズの構造と設計
ICLとIPCLは、どちらも眼内にレンズを挿入して視力を矯正する手術ですが、その決定的な違いはレンズを構成する「素材」と、老眼に対応できるかなどの「設計」にあります。
ICLとIPCLは、誕生した国やメーカーが異なるため、それぞれ独自のレンズ素材を採用しています。また、IPCLはICLに比べて度数展開、多焦点レンズのバリエーションが豊富です。
| ICL | IPCL | |
| レンズ素材 | コラマー | 親水性アクリル |
| 度数(球面) | -0.5D~-18.0D | -30.0D~+15.0D |
| 度数(乱視) | +1.0D~+4.0D | +0.5D~+10.0D |
| 度数(老視) | なし | +1.5D~+4.0D |
レンズの素材の違い(コラマー vs 親水性アクリル)
ICLとIPCLはレンズの素材に違いがあり、ICLが「コラマー」を使用しているのに対し、IPCLは「親水性アクリル」をベースとした独自素材を用いている点です。
この素材の違いは、コラマーはより生体親和性が高く、ICLは長期にわたる実績が豊富です。一方、親水性アクリル系の素材は、より多くの度数に対応しやすく、レンズのデザインを多様化しやすい特性を持っています。
どちらの素材も安全性が確立されていますが、素材特性の違いが、後の乱視矯正や老眼矯正といった設計の違いに繋がっていきます。
素材ごとのメリットと安全性評価
ICLのコラマーとIPCLの親水性アクリル、どちらも非常に高い安全性が評価されてますが、ICLは長年の使用実績による信頼性の高さが最大のメリットであり、IPCLは老眼対応レンズなど設計の自由度が高いことが強みです。
ICLのコラマー素材は、眼内で安定しやすく、目の中に有害な物質を放出しない高い生体適合性が証明されています。
対して、IPCLの親水性アクリルは、水分を含みやすく、柔軟性に優れているため、より小さな切開創から挿入しやすいというメリットがあります。
レンズの度数範囲と強度近視・遠視への対応力
IPCLとICLの違いは、対応できる近視・遠視の度数範囲に違いがあります。
これは、IPCLのレンズ素材(親水性アクリル)が持つ特性と、カスタマイズ性の高さによるものです。ICLも非常に広い度数に対応していますが、レンズの設計上の限界から、稀に強すぎる度数には対応できないケースもありますが、IPCLはより多くの度数に対応できます。
ICLでは対応できないと言われた方は、IPCLだと適応になる可能性もあるので、適応検査を受けて医師に確認してみてください。
乱視矯正(トーリック)におけるIPCLとICLの違い
乱視矯正用のレンズ「トーリックレンズ」の技術においても、IPCLとICLの間には、対応できる乱視の度数や製造技術に違いが見られ、IPCLの方がより強い乱視や、複雑な乱視の度数に対応できるケースが多いのが現状です。
ICLのトーリックレンズは、実績と安定性に優れていますが、対応できる度数には上限があります。
一方、IPCLは、レンズのカスタムメイド性に優れており、ICLでは対応が難しいとされる強度近視や強度乱視に対しても、矯正可能なレンズを設計しやすいという強みがあります。
老眼矯正(多焦点)レンズの有無と構造の違い
IPCLは近視のみを矯正する「単焦点レンズ」のみならず、老眼を矯正する「多焦点レンズ」があります。IPCLは多焦点レンズ(遠近両用)の選択肢があり、これは老眼治療に特化した設計になっているという構造的な違いがあります。
従来のICLは単焦点レンズであり、老眼の進行に対応できません。しかし、IPCLの多焦点レンズは、レンズの中央部と周辺部に複数の焦点を配置することで、遠方だけでなく手元にもピントが合うように設計されています。

もし現在老眼を自覚しだす年齢(主に40代以降)であれば、ICLでなくIPCLの多焦点レンズが推奨です。
20~30代の若者はICL、IPCLの単焦点レンズを勧められることがほとんどです。
*以下の記事でIPCLと老眼に関する詳しい説明をしています。
IPCLとICLの「手術の適応性」を左右する特徴の比較
ICLとIPCLはどちらも幅広い視力に対応可能ですが、レンズのサイズ展開に違いがありそれが手術の適応性を左右します。
ICLやIPCL手術では、レンズが目の中の空間(房水)にぴったりと収まり、安定することが非常に重要です。そのためレンズのサイズが細かく調整できるかというカスタマイズ性が重要となります。
| ICL | IPCL | |
| 全体径(サイズ) | 12.1mm 12.6mm 13.2mm 13.7mm | 11.0mm~14.0mm (0.25mm間隔) |
| レンズの固定方法 | 4点接触 | 6点接触 |
サイズ展開(目のサイズへの適合性)
IPCLは多くのレンズのサイズ展開があります。
レンズのサイズは非常に重要で、目に合っていないと、視界の異常や、白内障などの合併症リスクを高める可能性があります。ICLは特定のサイズ展開を持っていますが、IPCLは目のサイズが平均的ではない方にもより細かく適合させやすいという違いがあります。
レンズ固定方法の違いと術後の安定性
ICLとIPCLは、どちらもレンズを眼内に固定する方法に違いがあり、ICLは4点接触で固定するのに対し、IPCLは6点接触の指示部で安定を図るという設計の違いがあります。
ただし設計の違いはあるけれども、どちらのレンズも固定は安定していると言われています。
これは特に乱視がある人はレンズの固定が見え方に大きく影響するのでとても重要です。
手術後の安全性と合併症リスクの比較検証
ICLとIPCLを選ぶ上で、気になる長期的な安全性と合併症のリスクですが、どちらの手術も高い安全性が確立されています。
眼内コンタクトレンズ手術の合併症として懸念されるのは、レンズが水晶体や眼内の構造に与える影響です。レンズの違いがあるにせよ、どちらも安全性が確立されているので神経質に気にするほどではないと言って良いでしょう。
長期的な安全性データと臨床成績の比較
ICLとIPCLを比較する上で、長期的な安全性データと臨床成績には違いがあります。ICLは世界中で20年以上にわたる豊富な臨床実績と長期データが蓄積されているのに対し、IPCLは比較的新しいレンズであるため、長期的なデータはICLほど豊富ではありません。
ICLが長年にわたり世界的に高い評価を得てきた背景には、この膨大な安全性データがあります。一方、IPCLは新しい技術である分、データはこれから蓄積されていく段階です。どちらのレンズも安全性が確認されていますが、実績の「長さ」という点でICLに軍配が上がるのは事実です。
発生が報告されている合併症(白内障、ハロー・グレアなど)のリスク差
IPCLとICLの手術後に報告されている主な合併症(ハロー・グレアなど)のリスクにも、若干の違いが見られます。多焦点IPCLでは、遠近両用の特性上、ハロー(光の輪)やグレア(光のまぶしさ)といった現象が起きやすい傾向にあるからです。
多焦点IPCLは、レンズの表面に複数の焦点を持たせる設計のため、光が分散しやすく、特に夜間にハロー・グレアを感じるケースが報告されています。
これらのリスクの違いは、レンズの設計そのものに起因します。日中の見え方の質と、夜間の光の見え方のどちらを優先するかを検討することが大切です。
万が一の場合の取り出し(可逆性)に関する違い
IPCLもICLも、万が一何か問題が発生した場合にレンズを取り出せる「可逆性」があるという点で、どちらのレンズも安全に取り出すことが可能です。
レーシックは角膜を削るため元に戻せませんが、眼内コンタクトレンズは目の組織を大きく変えることなく挿入されます。これが、両レンズの最大の安心材料です。
費用、納期の比較
IPCLは多焦点レンズなどのカスタマイズ性が高い分、ICLよりも高額になる傾向があり、納期も長くかかる場合があるという違いがあります。
| ICL | IPCL | |
| 単焦点相場 | 両眼50~60万前後 (乱視は追加10万ほど) | 両眼50~60万前後 (乱視は追加10万ほど) |
| 多焦点相場 | 両眼80万前後 (乱視は追加10万ほど) | |
| 納期 | 一般的には1~2週間 | 2か月半 |
IPCLとICLの手術費用相場の比較と価格差の要因
ICLとIPCLの手術費用はレンズの材質や設計、そしてクリニックの技術や保証制度によって大きく異なります。単焦点レンズのIPCLであればICLと同額くらいの所が多いようですが、多焦点レンズのIPCLを希望する場合、一般的に単焦点レンズよりも高額になります。
具体的な相場は、単焦点の場合、ICLとIPCLに大きな違いはありません。しかし、老眼矯正ができる多焦点レンズになると、IPCLは片眼で数十万円高くなるケースが多いでしょう。また、IPCLは強度近視など特殊な度数にもカスタムメイドで対応するため、その特殊性が価格に反映されます。
レンズの納期と手術までの待ち時間に関する違い
ICLとIPCLでは、レンズが手元に届くまでの納期にも違いがあり、それが手術までの待ち時間に影響します。ICLは比較的規格化されたレンズが多く、納期が早い傾向がありますが、IPCLはカスタムメイド性が高いため、製造に時間がかかり納期が長くなる可能性があります。
ICLの多くは、在庫や流通ルートが確立されており、比較的スムーズに手術日が決まりやすいでしょう。一方、IPCLは、老眼矯正用の多焦点レンズや、強度の乱視に対応するためのレンズが一つ一つオーダーメイドで製造されるため、納期に数ヶ月かかる場合があります。
手術の待ち時間に違いが出るため、ご自身のスケジュールと照らし合わせ、納期も含めて手術の計画を立てることが大切になります。
まとめ:IPCLとICL、あなたに最適なレンズはどちらか?
IPCLとICLの様々な違いを比較してきましたが、どちらがあなたにとって最適なのかは、長年の実績と安定性を重視し、老眼の心配がない若い世代にはICL、強度な乱視や近視があり、特に老眼矯正(遠近両用)を最優先したい世代にはIPCLがそれぞれ強みを発揮します。
ICLは長期的な安全性データが豊富で信頼性が高いのが魅力です。一方、IPCLは老眼に対応できる多焦点レンズの選択肢が豊富であり、カスタマイズ性が高いことから、より複雑な目の状態に対応しやすいという違いがあります。
最適なレンズを選ぶコツは、ご自身のライフスタイル(夜間運転の有無、デスクワークの量など)と老眼の進行度合いを明確にし、ICLとIPCLを取り扱うクリニックで専門医と徹底的に相談してみてください。ご自身に合うレンズの提案をしてくれますので是非一度足を運んでみてくださいね。



